核医学の3本柱

現在の医療で用いられる核医学の技術としては、RI検査、RI治療、PET検査の大きく3つの柱があります。

1つ目は 昔から使用されてきた歴史のある放射性同位元素(RI = Radio-Isotope)が 人体を透過するガンマ線を放出する性質を利用してを人体の機能を反映する化学物質に組み込んでその分布から機能診断する、いわゆるシンチグラムあるいはRI検査と言われる技術。現在よく使われるのは脳機能、心機能、腎機能といったところですが、脳内のレセプターの機能、心筋や骨の代謝、唾液腺の機能など様々な人体の機能を評価するために用いられています。

2つめは放射性同位元素(RI = Radio-Isotope)を治療のために用いる核医学治療。歴史的には放射性ヨウ素(I-131)から放出されるベータ線を用いた甲状腺機能亢進症や甲状腺がんの治療に用いられてきました。現在ではストロンチウム(Sr-89)から放出されるベータ線ラジウム(Ra-223)から放出されるアルファ線を用いた骨転移による疼痛治療や、イットリウム(Y-90)から放出されるベータ線を用いた悪性リンパ腫の治療も行われるようになました。ルテチウム(Lu-177)から放出されるベータ線を用いた神経内分泌腫瘍や前立腺癌の治療なども研究されています。

3つめは電子と陽電子の衝突で、反対方向に放出される二つの光子(消滅放射線)を計測してCTのように断層画像化するPET検査の技術です。PET検査は原理的に1番目の核医学検査と同じようなものなのですが21世紀に入って急激に発展してきたため、いまや核医学の技術を形成する一つの柱となっています。陽電子を放出する放射性同位元素としては酸素、炭素、窒素、フッ素などが知られていますが、現在の医療ではフッ素(F-18)をブドウ糖に類似した構造の化学物質に結合させて(F-18 FDG)投与しその分布から身体のブドウ糖代謝の機能(高低)を画像化する技術がよく普及しています。現在ではX線CTを使った身体構造の画像とPETを使ったブドウ糖代謝の画像をコンピューターで重ね合わせて身体の機能と構造を同時に評価するPET/CTと呼ばれる技術が使われることがほとんどとなりました。