核医学と放射線診断学

「先生のやっている核医学って放射線診断と同じ?」とよく訊かれるのですが、 医療用の画像診断をしていると言う点ではざっくりと同じような仕事なのですが、厳密には 診断する対象が異なるためにそれに用いているツールも違うと言うことになります。 核医学という名前はこのツールに由来するのかなと思っています。

医療用の画像診断というと、代表的なのはレントゲン写真だとおもうのですが この技術は体の外から放射線(X線)を照射し人体を透過するときの放射線の吸収の違いをフィルムに焼き付けて人体の構造を画像化します。CT装置なども同じような原理なのですが、要は 人体の構造を画像化するために放射線を用いるので放射線診断と呼ばれるのかなと思います。

それに対して私たちの従事している核医学と言う技術は、放射性同位元素(RI = Radio-Isotope)を用いた化学物質である放射性薬剤を体内に投与してその分布や時間的な変化を画像化して身体の機能を診断します。放射性同位元素の放出するガンマ線を使うことが多いのですが、このガンマ線原子核から放出されるため核医学と呼ばれているのだと思っています。

現在では病院内の診療科としては放射線診断科の中に核医学の部門が組み込まれていることが多いと思います。画像診断の技術は急激に進歩しており今や放射線核医学だけではなく磁力や超音波、遠赤外線など様々な医用画像が診断に用いられるようになりました。もはや核医学だけが機能画像をやっているわけではないのですが、 このような歴史があるので我々核医学の専門家は人体の構造よりも機能に興味があって仕事をしているということになります。