機能画像を診断に使う場面

病気と言うのはそもそもが機能の異常であって、人間の体が本来動くべき機能を果たせない状態のことを意味します。 機能を果たせない状態になった原因または結果として、構造の異常を認めることも多々あります。 反対にいうと構造に異常を認めても機能が正常であれば生きていくには特に問題はないのでそのような状態は病気とはいいません。

実際の画像診断に当てはめて考えてみると、 例えば心臓の冠動脈に動脈硬化性の狭窄を認めても(構造に異常がある状態)、心筋内の毛細血管の中を流れる血流が低下していなければ(機能低下が無い状態) 狭心症などの病気は発生しません。 動脈硬化性の狭窄の有無については X線 CTやレントゲン透視で 解剖学的な画像を使って診断します。一方、 目に見えないような細い毛細血管の中の血流 が保たれているかどうかについては 核医学検査であるシンチグラムを用いて機能として診断します。

核医学の検査を行うには大掛かりな設備が必要となります。日本は 画像診断機器の普及に関しては圧倒的に世界一なのですが、他の先進国と異なり医療機器の選択と集中が行われていないので大規模の本格的な画像診断設備を備える病院は案外少ないのが実態です。そのため大型の設備投資が必要な核医学の施設を持たない基幹病院も数多く存在します。解剖学的な構造の異常と機能障害はある程度相関するのが普通で上記のように一致しない例はどちらかと言うと例外的なことになるので、 機能画像を使わずに診療を進めることも珍しくはありません。